チバカツカンパニー 櫻井麹店【2023年6月号】
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2023/5/31
以下は 1 年前に書かれた内容です
創業は約250年前、江戸時代後期。長年にわたり地域に愛されてきた麹製品の老舗。ワークショップ「手造り味噌工房」の開催や、ホームページ・SNSなどを通して麹の文化を広める活動にも積極的に取り組む。「手造り米麹」は2021年度の「千葉市食のブランド『千』」認定品。
麹という日本伝統の食文化を守り、次の時代に繋げていきたいのです
お客様が何組も続々と訪れ、賑わう店内。たいそうな繁盛ぶりです。小紙編集部記者・稲しん子が今回向かったのは、検見川の古い街道沿いに店を構える「櫻井麹店」。味噌や塩麹、甘酒といった麹製品を、昔ながらの手法で丁寧に作っているお店です。伝統を守るとはどういうことか、お店を取り仕切る高須舞さんにお話を伺いました。
材料を国産にこだわり手作業で仕上げる
稲しん子(以下・稲)お客様はご近所の方々が中心ですか?
高須さん(以下・高)とてもありがたいことに何十年も地域の方々に贔屓してくださっていて。お車で遠くからいらっしゃるお客様もいます。皆さん、本当にいい人なんです。
稲・応援団が付いている。
高・感覚的には8割くらいがリピーターさんなんじゃないかと思います。
稲・高須さんは何代目になるのですか?
高・いえ、私は助っ人で、今の店主は私の叔父なんです。八代目ですがちょっと体調を崩してしまった時がありまして…。私から見て従弟、つまり叔父の息子がいずれ九代目として店を継ぐはずです。
稲・検見川で長くご商売をされている理由が何かあるのでしょうか?
高・検見川神社の門前町だから、でしょうね。参道で甘酒を売ったりお酒を奉納したりしていた土地柄で、かつてはこのあたりに麹屋さんが何軒もあったんですよ。今はうちだけになってしまいましたが。
稲・使用する材料は国産にこだわっていらっしゃるとか…。
高・大豆は丹波の銀鶴大豆で、塩は赤穂の天塩、米麹のお米は千葉県産です。使っている材料はこの3種類だけで、その意味ではとてもシンプルなのです。
稲・それだけにごまかしが効かないと思います。
高・うちは昔ながらの丁寧な手作業で麹を作っています。お米磨きから始まって蒸かしたお米に菌を付けて、それを「室」でだいたい一晩から一日半寝かせます。一つひとつの工程は単純。けれど、単純ゆえに難しいのです。天候や温度、湿度など、コンディションがすべて同じでも出来上がりが同じになるとは限りません。私なりにデータを取ったり研究したりしていますけれど重要なのは職人としての経験に裏付けされた手触りだったり勘だったり、匠の技みたいな領域の感覚的な要素なのでしょうね。実際、叔父はそういうデータ的なものにはほとんど頼っていなかったんです。
稲・例えば機械化を検討なさったりは?
高・うちは手作業でこれからもやっていくと思います。オートメーションでも手作業でも、麹は麹だろうと言われたらそれまでなんですが(笑)、私は麹を売るというより伝統を繋げたい。叔父や先代、先々代がやってきたことを守っていこうとするなら、機械化は違うんじゃないでしょうか。
稲・そこは妥協したくない、と。
高・手作業の感覚を大事にすることで愛着が湧くし、愛着が湧くとお客様に自信をもって伝えられるし、お客様に届いてほしいという気持ちも大きくなるんです。うちの規模だったら手作業でまったく問題ないし、もっと頑張りたくなります。ボタン1個押せばできちゃうようだと、他の人が作ったものを売っている感覚になりそうな気がして。もちろんデータの収集も怠りませんが、伝統のやり方を守ることが大前提です。
高須さん(以下・高)とてもありがたいことに何十年も地域の方々に贔屓してくださっていて。お車で遠くからいらっしゃるお客様もいます。皆さん、本当にいい人なんです。
稲・応援団が付いている。
高・感覚的には8割くらいがリピーターさんなんじゃないかと思います。
稲・高須さんは何代目になるのですか?
高・いえ、私は助っ人で、今の店主は私の叔父なんです。八代目ですがちょっと体調を崩してしまった時がありまして…。私から見て従弟、つまり叔父の息子がいずれ九代目として店を継ぐはずです。
稲・検見川で長くご商売をされている理由が何かあるのでしょうか?
高・検見川神社の門前町だから、でしょうね。参道で甘酒を売ったりお酒を奉納したりしていた土地柄で、かつてはこのあたりに麹屋さんが何軒もあったんですよ。今はうちだけになってしまいましたが。
稲・使用する材料は国産にこだわっていらっしゃるとか…。
高・大豆は丹波の銀鶴大豆で、塩は赤穂の天塩、米麹のお米は千葉県産です。使っている材料はこの3種類だけで、その意味ではとてもシンプルなのです。
稲・それだけにごまかしが効かないと思います。
高・うちは昔ながらの丁寧な手作業で麹を作っています。お米磨きから始まって蒸かしたお米に菌を付けて、それを「室」でだいたい一晩から一日半寝かせます。一つひとつの工程は単純。けれど、単純ゆえに難しいのです。天候や温度、湿度など、コンディションがすべて同じでも出来上がりが同じになるとは限りません。私なりにデータを取ったり研究したりしていますけれど重要なのは職人としての経験に裏付けされた手触りだったり勘だったり、匠の技みたいな領域の感覚的な要素なのでしょうね。実際、叔父はそういうデータ的なものにはほとんど頼っていなかったんです。
稲・例えば機械化を検討なさったりは?
高・うちは手作業でこれからもやっていくと思います。オートメーションでも手作業でも、麹は麹だろうと言われたらそれまでなんですが(笑)、私は麹を売るというより伝統を繋げたい。叔父や先代、先々代がやってきたことを守っていこうとするなら、機械化は違うんじゃないでしょうか。
稲・そこは妥協したくない、と。
高・手作業の感覚を大事にすることで愛着が湧くし、愛着が湧くとお客様に自信をもって伝えられるし、お客様に届いてほしいという気持ちも大きくなるんです。うちの規模だったら手作業でまったく問題ないし、もっと頑張りたくなります。ボタン1個押せばできちゃうようだと、他の人が作ったものを売っている感覚になりそうな気がして。もちろんデータの収集も怠りませんが、伝統のやり方を守ることが大前提です。
味噌造りが体験できるワークショップを開催
稲・そういう気持ちがワークショップ「手造り味噌工房」に繋がっているのですか?
高・麹に親しみを持ってほしいと思って開催しています。味噌や甘酒、塩麹などになる前の段階を自分で作ることで知ってもらいたいなと。麹は日本古来の食文化を支える縁の下の力持ちなんですよ。
稲・そういえば、麹は日本独自のものと聞いたことがあります。
高・チーズやヨーグルト、アンチョビとか、菌を用いて発酵させる手法は世界中に普通にありますけれど、麹菌は日本が主流です。麹菌を培養している種屋さんを「もやし屋」と言うんですが、それが日本に何軒かあって、うちは秋田のもやし屋さんから買っています。米麹を作ると、そこからコピーみたいに菌が増えるのですが、コピーが度重なると菌の効力が薄れてしまうんですよ。ですから自前の種より、もやし屋さんから仕入れた種を使います。
稲・「手造り味噌工房」の開催はいつですか? 面白そう。
高・10月から翌年の4月の間、うちが麹を作る季節の火曜日から土曜日の午前中に行っています。月曜日もときどき。
稲・そんなに頻繁に? 1回に何人くらい参加されます?
高・多い時で20~25人くらいかな。毎年1回、お友達と一緒に来て味噌を作るのが恒例イベントになっている方もいれば、インスタグラムを見たという親子が冬休みや春休み、土曜日に来てくださったり。ご新規さんも最近は多くて、今年の4月はなんと70人以上も来てくださいました。
稲・盛況で何よりです。ただ、味噌造りのプロフェッショナルが一般の方にノウハウを広げてしまうとゆくゆくはご商売に影響が出ることになったりしませんか。
高・「手前味噌」という言い方があるように、かつてはそれぞれの家庭で味噌を作る文化があったんです。それがスーパーで買うものに変化したことで途切れてしまいました。私たちがその文化を復活させると言ったらおこがましいですけれどお味噌を買おうか、それともわが家で作ろうか、と考えるくらいの選択肢ができれば嬉しいなと思うんです。
稲・私の家も昔は自分たちで作っていたらしいです。でも、母が作らなかったから、私も作り方を知りません。
高・麹屋としては味噌を家で作る文化がある方が、私たちのメッセージが次の世代に伝わりやすいでしょうし、よし頑張ろうという気になります。
稲・確かに、何もしなければ廃れてしまいますよね。
高・麹なんて、知らない人が大半だと思います。聞いたことはあるなという程度で実物は見たことのない人がほとんど。だからまずは知ってもらいたいということで、インスタグラムで情報を発信したり外部のワークショップやイベントなどにも参加して多くの方に麹を体験してもらっています。そうそう、最近嬉しかったエピソードがありまして。「手造り味噌工房」にお母様と一緒に参加されていた娘さんが家庭を持って、今度は自分の娘さんを連れて来てくれたんです。
稲・三世代にわたっての参加、それは素敵。高須さんの理念が広く認知されてきているようでこれからが楽しみですね。
高・私に続く世代が麹造りを頑張れるよう、若い年齢層のお客様も取り込んでいきたいです。それと、コロナ禍が落ち着いてインバウンドの市場が戻ってきているので、海外の方を対象としたワークショップを開催できたらとも考えています。
稲・いいですね。世界に知ってもらいましょう。今日はありがとうございました。
高・麹に親しみを持ってほしいと思って開催しています。味噌や甘酒、塩麹などになる前の段階を自分で作ることで知ってもらいたいなと。麹は日本古来の食文化を支える縁の下の力持ちなんですよ。
稲・そういえば、麹は日本独自のものと聞いたことがあります。
高・チーズやヨーグルト、アンチョビとか、菌を用いて発酵させる手法は世界中に普通にありますけれど、麹菌は日本が主流です。麹菌を培養している種屋さんを「もやし屋」と言うんですが、それが日本に何軒かあって、うちは秋田のもやし屋さんから買っています。米麹を作ると、そこからコピーみたいに菌が増えるのですが、コピーが度重なると菌の効力が薄れてしまうんですよ。ですから自前の種より、もやし屋さんから仕入れた種を使います。
稲・「手造り味噌工房」の開催はいつですか? 面白そう。
高・10月から翌年の4月の間、うちが麹を作る季節の火曜日から土曜日の午前中に行っています。月曜日もときどき。
稲・そんなに頻繁に? 1回に何人くらい参加されます?
高・多い時で20~25人くらいかな。毎年1回、お友達と一緒に来て味噌を作るのが恒例イベントになっている方もいれば、インスタグラムを見たという親子が冬休みや春休み、土曜日に来てくださったり。ご新規さんも最近は多くて、今年の4月はなんと70人以上も来てくださいました。
稲・盛況で何よりです。ただ、味噌造りのプロフェッショナルが一般の方にノウハウを広げてしまうとゆくゆくはご商売に影響が出ることになったりしませんか。
高・「手前味噌」という言い方があるように、かつてはそれぞれの家庭で味噌を作る文化があったんです。それがスーパーで買うものに変化したことで途切れてしまいました。私たちがその文化を復活させると言ったらおこがましいですけれどお味噌を買おうか、それともわが家で作ろうか、と考えるくらいの選択肢ができれば嬉しいなと思うんです。
稲・私の家も昔は自分たちで作っていたらしいです。でも、母が作らなかったから、私も作り方を知りません。
高・麹屋としては味噌を家で作る文化がある方が、私たちのメッセージが次の世代に伝わりやすいでしょうし、よし頑張ろうという気になります。
稲・確かに、何もしなければ廃れてしまいますよね。
高・麹なんて、知らない人が大半だと思います。聞いたことはあるなという程度で実物は見たことのない人がほとんど。だからまずは知ってもらいたいということで、インスタグラムで情報を発信したり外部のワークショップやイベントなどにも参加して多くの方に麹を体験してもらっています。そうそう、最近嬉しかったエピソードがありまして。「手造り味噌工房」にお母様と一緒に参加されていた娘さんが家庭を持って、今度は自分の娘さんを連れて来てくれたんです。
稲・三世代にわたっての参加、それは素敵。高須さんの理念が広く認知されてきているようでこれからが楽しみですね。
高・私に続く世代が麹造りを頑張れるよう、若い年齢層のお客様も取り込んでいきたいです。それと、コロナ禍が落ち着いてインバウンドの市場が戻ってきているので、海外の方を対象としたワークショップを開催できたらとも考えています。
稲・いいですね。世界に知ってもらいましょう。今日はありがとうございました。
以上は 1 年前に書かれた内容です
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