[スポーツコラム]「世界一のクラブ」を狙える唯一のチームスポーツかもしれない【稲毛新聞2025年5月29日号】

  256   2026/5/27


作/千葉ドットCOO 梶原健

 私はこれまで様々なスポーツやオーケストラなど「興行」の現場に関わってきた。その中で最近強く感じていることがある。それは「日本発で世界一のクラブをつくれる可能性がある競技は、実はかなり限られる」ということ。
 
 サッカーにはFCバルセロナやレアル・マドリードがあり、リーグで言えばプレミアリーグが、野球にはMLB、バスケットボールにはNBAが存在する。いずれも長い歴史、巨大資本、世界中のトップ選手、莫大な放映権を背景に「世界の頂点」を極めている。

この構造の中で、日本のクラブが世界一になるのは現実的に極めて難しい。しかし唯一、まだその席が空いている競技がある。それがバレーボールだ。

 現在バレーボールの世界最高峰リーグはイタリアのセリエA1。競技レベル、ブランド、選手層、歴史、どれも世界トップである。
 
 一方、日本のSVリーグはまだ「追う立場」で、世界的な評価は3~5位レンジ。トップ選手の年俸規模も欧州トップリーグには及ばない。だがその差は、サッカーやバスケットボールのような「100年積み上がった埋められない差」ではない。バレーボールはまだ世界の確固たる地位のリーグ、チームが定まっていない。実際、バレーボール男子世界クラブ選手権では、日本のクラブが決勝まで進出した。つまり「絶対に勝てない壁」は存在せず、ここに大きな可能性がある。
 
 さらに千葉には独自の強みがある。クラブが段階的に成長できる「アリーナ環境」だ。千葉ドットのホーム、千葉には6千人規模の千葉ポートアリーナ、さらに1万人規模のLaLa arena TOKYO‐BAYがある。そして将来的には、海浜幕張エリアに2万人規模のアリーナ計画も。これは非常に大きい。

 スポーツクラブは地域密着から始まり、熱狂をつくり観客やスポンサーを増やし、成長に合わせて「器」を変えていく。その意味で6千人、1万人、2万人と、段階的にスケールアップできる環境が千葉にあり、世界的に見ても極めて恵まれている。しかも、海浜幕張は東京からアクセスも良く、都市機能、宿泊、商業、エンターテインメントが集積した「世界を呼び込める街」だ。スポーツビジネスにおいてアリーナは、演出、映像、音響、VIP、スポンサー、飲食、回遊導線など全てを決定する「体験装置」と考えている。
 
 私は千葉ジェッツ創設時代から、競技だけではなく空間や熱狂がクラブの価値を創ることを見てきた。世界のトップクラブは「文化」を提供している。だからこそ千葉ドットが目指しているのは、バレーボールを通じて「日本から世界に誇れるIP」をつくることだ。IPとは、そのクラブの世界観に共感し応援し、集まりたくなる、文化そのもの。千葉ドットを応援することが誇りになるとき、地域クラブから世界ブランドへ変わる。
 
 もしSVリーグが世界最高峰リーグになり圧倒的なブランドを持つクラブが誕生したら、マーケットは世界へ広がりサッカーのFCバルセロナのような存在になる。もちろん簡単ではない。資金力や選手育成、リーグ全体の成長も必要。だが構造的に不可能ではない。サッカーや野球ではこの場所に立つのは難しいが、バレーボールでは今立てている。

 スポーツビジネスは夢を語る仕事。市場構造、世界、競技特性を見て未来を描く。その先に初めて「本気の夢」がある。世界一のリーグをつくる。世界一のクラブをつくる。バレーボールで日本から世界に誇れるIPを生み出す。それが千葉ドットの目指す未来だ。
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