「地域のために何ができるか」千葉ウシノヒロバ【2023年3月号】
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2023/3/7
以下は 1 年前に書かれた内容です
チバカツカンパニー
【千葉ウシノヒロバ】
キャンプ場兼牛の預託施設。「牛と人と自然が、穏やかに交差する場所」をコンセプトとして2020年にオープン。キッチンカー型のバーや、近隣の産品を集めたショップなど、キャンプ以外の魅力も充実している。人が自然と向き合い、気づきを得る機会を創出する取り組みが評価され、2022年のグッドデザイン賞を受賞した。
【千葉ウシノヒロバ】
キャンプ場兼牛の預託施設。「牛と人と自然が、穏やかに交差する場所」をコンセプトとして2020年にオープン。キッチンカー型のバーや、近隣の産品を集めたショップなど、キャンプ以外の魅力も充実している。人が自然と向き合い、気づきを得る機会を創出する取り組みが評価され、2022年のグッドデザイン賞を受賞した。
小紙編集部記者・稲しん子が今回伺ったのは、牛のいるキャンプ場「千葉ウシノヒロバ」です。自然豊かな若葉区の地に広がる開放感たっぷりの敷地。レトロだったりモダンだったり、何気にお洒落な建物。こんな素敵空間を作り出せる理由を探りに、代表取締役の川上鉄太郎さんを訪ねてきました。
牛の暮らす場所で、次の世代に繋がる仕掛けを作りたかった
稲しん子(以下・稲)名刺には「株式会社チカビ」とありますが本来は何をなさっている会社ですか?
川上さん(以下・川)デザインコンサルティングです。経営コンサルティングからウェブサイトやポスターのデザインまで、幅広く行っています。
稲・キャンプ場を手がけることになったきっかけは?
川・6~7年ほど前から千葉の企業から仕事を依頼されるようになり、その流れで自治体ともお付き合いができました。九十九里町では、保育園の跡地を活用してピーナッツバターや発酵食品の工場「LOCAL FACTORY(ローカルファクトリー)」を作りました。それから印旛郡栄町でインバウンド向けのバスツアーを企画したり、酒々井町のパークゴルフ場跡地に「MONOW(モノー)」という実験的モノづくり施設を開いたりしてきた中で、千葉市からお声掛かりをいただいたことが「千葉ウシノヒロバ」のスタートです。
稲・牛とキャンプ場の取り合わせって、考えてみると、ありそうでなかった形です。
川・この場所はもとは千葉市が50年ほど運営していた乳牛の育成牧場でした。酪農家から仔牛を預かり、2年くらい育てたら返してあげるという預託施設です。牛の保育園みたいなものですね。運営を民間に任せたいと、当社に打診が来ました。
稲・キャンプ場より牛が先だったのですね。
川・牛の育成を引き継ぐことが前提条件でした。私たちとしては、せっかくなら地域の歴史をひもときながら、さらに次の世代に繋げていけるような仕掛けを作りたいと思ったんです。
稲・それでキャンプ場も?
川・キャンプ場を主軸に、地域の方々と連携しながらマルシェやイベントを開催する交流の場として運営しています。
稲・マルシェではどのようなものを売っているのですか。
川・地域の農家さんから仕入れた野菜などですね。自作のキッチンカーを出して、牛乳のカクテルや千葉県産のクラフトビールを売ったりもしています。
稲・私、南房総市出身なのですけれど、地方の人って保守的で、地元の魅力にまったく気づいていなかったりします。地域とのコミュニケーションで苦労された点もあるのでは?
川・ここをオープンするに当たり、周辺を挨拶に回ったのですが、
「こんなところに誰が来るのか」と、ものすごく言われました(笑)。でも、キャンプ場は開業前から注目され、現在もおかげさまで盛況ですし、マルシェにもお客様がたくさん来てくださっています。
稲・マルシェで野菜が売れれば農家さんも嬉しいですよね。
川・最近では農家さんの方から「こういうものを売ってみたいんだけど」というアイデアが出てくるようになりました。
川上さん(以下・川)デザインコンサルティングです。経営コンサルティングからウェブサイトやポスターのデザインまで、幅広く行っています。
稲・キャンプ場を手がけることになったきっかけは?
川・6~7年ほど前から千葉の企業から仕事を依頼されるようになり、その流れで自治体ともお付き合いができました。九十九里町では、保育園の跡地を活用してピーナッツバターや発酵食品の工場「LOCAL FACTORY(ローカルファクトリー)」を作りました。それから印旛郡栄町でインバウンド向けのバスツアーを企画したり、酒々井町のパークゴルフ場跡地に「MONOW(モノー)」という実験的モノづくり施設を開いたりしてきた中で、千葉市からお声掛かりをいただいたことが「千葉ウシノヒロバ」のスタートです。
稲・牛とキャンプ場の取り合わせって、考えてみると、ありそうでなかった形です。
川・この場所はもとは千葉市が50年ほど運営していた乳牛の育成牧場でした。酪農家から仔牛を預かり、2年くらい育てたら返してあげるという預託施設です。牛の保育園みたいなものですね。運営を民間に任せたいと、当社に打診が来ました。
稲・キャンプ場より牛が先だったのですね。
川・牛の育成を引き継ぐことが前提条件でした。私たちとしては、せっかくなら地域の歴史をひもときながら、さらに次の世代に繋げていけるような仕掛けを作りたいと思ったんです。
稲・それでキャンプ場も?
川・キャンプ場を主軸に、地域の方々と連携しながらマルシェやイベントを開催する交流の場として運営しています。
稲・マルシェではどのようなものを売っているのですか。
川・地域の農家さんから仕入れた野菜などですね。自作のキッチンカーを出して、牛乳のカクテルや千葉県産のクラフトビールを売ったりもしています。
稲・私、南房総市出身なのですけれど、地方の人って保守的で、地元の魅力にまったく気づいていなかったりします。地域とのコミュニケーションで苦労された点もあるのでは?
川・ここをオープンするに当たり、周辺を挨拶に回ったのですが、
「こんなところに誰が来るのか」と、ものすごく言われました(笑)。でも、キャンプ場は開業前から注目され、現在もおかげさまで盛況ですし、マルシェにもお客様がたくさん来てくださっています。
稲・マルシェで野菜が売れれば農家さんも嬉しいですよね。
川・最近では農家さんの方から「こういうものを売ってみたいんだけど」というアイデアが出てくるようになりました。
マルチスピーシーズとリジェネラティブ
稲・運営する上で大事にされている理念は何でしょうか?
川・根っこの部分にあるのが「マルチスピーシーズ」という概念です。生物多様性に近い意味合いなのですけれど、地球上には動物や微生物、植物など様々な生物が存在します。人間という種はあくまでもその中の一つに過ぎず、地球という大きな生命サイクルに組み込まれてることに対し、もっと真摯に向き合う必要があると思います。SDGsやサスティナブルといった言葉がこの数年で世の中に広まってきましたけれど、まだまだ表面的です。
稲・具体的にはどうなさっているのですか?
川・例えば、牛舎は「アニマルウェルフェア」という考え方に則って設計しました。できる限りストレスや不快感の少ない飼育環境を作ってあげることを目指して完成したのが、天井が高くて風通しが良く、1頭あたりのスペースも広く確保した、清潔さを保ちやすい牛舎です。もちろん、実際に快適かどうかは牛に聞いてみないとわかりませんが(笑)、思いやるという姿勢が大切なんです。そういう考え方を、キャンプのお客様や、フリースクールで来てくれる小中学生たちに伝えられるといいなと思います。
稲・牛舎を拝見しましたが、牛さんたちは気持ちよさそうに寝そべっていましたよ。
川・私は会社で「リジェネラティブデザイン」を担当しています。リジェネラティブとは、サスティナブルを一歩先に進めた考え方。例えば、ゴミを減らすということについても、マイナスをゼロに近づけようとしているだけで、プラスになっていないわけです。だからもっとプラスを生み出さなくてはということで、いまトレンドになりつつある概念がリジェネラティブなんです。
稲・ウシノヒロバの施設づくりも、リジェネラティブの発想を取り入れていらっしゃるのですか?
川・象徴の一つが、総合案内所の「センターハウス」。もともとあった古い倉庫を再利用しています。普通なら取り壊すのでしょうけれど、取り壊せば建築廃材が発生し、環境負荷を増やしてしまう。その課題をデザインの力で解決しました。受付のカウンターもテーブルもすべて廃材です。
稲・すごくお洒落です。錆びた牛乳缶とか古いアイテムも上手に活かされていて。レトロ好きにはたまらないです。
川・ここでお客様が寛ぎを感じてくれて、充実した気持ちやポジティブさが生まれたとしたら、それもプラスなのですよ。
稲・では今後もマルチスピーシーズやリジェネラティブといった考え方をベースにした活動を?
川・そうですね。去年から、牛糞を原料にした紙作りを実験しています。今は品質をどう上げようかという段階まで来ているんです。普通の紙のように加工したり絵を描いたりできるようになったら、アーティストさんとコラボレーションして、牛糞紙アートを制作し、畑の上でインスタレーションのように展示したい。もとが牛糞なので、自然に朽ちていけば畑の土に還ります。その畑から育った野菜を収穫する、というところまでやりたいんですよ。
稲・自然のサイクルをアートで見せるって壮大ですね。
川・そこまでやれば、けっこう伝えたいことが伝えられるのではないかと思うんです。あとは地域に対してもっと関わっていきたい。近隣の主婦の方々などが気軽に立ち寄ってくれるような、例えば習い事とか、地域の方を対象としたサービスを準備しているところで、年内には始められると思います。
稲・今日は勉強になりました。ありがとうございました。
川・根っこの部分にあるのが「マルチスピーシーズ」という概念です。生物多様性に近い意味合いなのですけれど、地球上には動物や微生物、植物など様々な生物が存在します。人間という種はあくまでもその中の一つに過ぎず、地球という大きな生命サイクルに組み込まれてることに対し、もっと真摯に向き合う必要があると思います。SDGsやサスティナブルといった言葉がこの数年で世の中に広まってきましたけれど、まだまだ表面的です。
稲・具体的にはどうなさっているのですか?
川・例えば、牛舎は「アニマルウェルフェア」という考え方に則って設計しました。できる限りストレスや不快感の少ない飼育環境を作ってあげることを目指して完成したのが、天井が高くて風通しが良く、1頭あたりのスペースも広く確保した、清潔さを保ちやすい牛舎です。もちろん、実際に快適かどうかは牛に聞いてみないとわかりませんが(笑)、思いやるという姿勢が大切なんです。そういう考え方を、キャンプのお客様や、フリースクールで来てくれる小中学生たちに伝えられるといいなと思います。
稲・牛舎を拝見しましたが、牛さんたちは気持ちよさそうに寝そべっていましたよ。
川・私は会社で「リジェネラティブデザイン」を担当しています。リジェネラティブとは、サスティナブルを一歩先に進めた考え方。例えば、ゴミを減らすということについても、マイナスをゼロに近づけようとしているだけで、プラスになっていないわけです。だからもっとプラスを生み出さなくてはということで、いまトレンドになりつつある概念がリジェネラティブなんです。
稲・ウシノヒロバの施設づくりも、リジェネラティブの発想を取り入れていらっしゃるのですか?
川・象徴の一つが、総合案内所の「センターハウス」。もともとあった古い倉庫を再利用しています。普通なら取り壊すのでしょうけれど、取り壊せば建築廃材が発生し、環境負荷を増やしてしまう。その課題をデザインの力で解決しました。受付のカウンターもテーブルもすべて廃材です。
稲・すごくお洒落です。錆びた牛乳缶とか古いアイテムも上手に活かされていて。レトロ好きにはたまらないです。
川・ここでお客様が寛ぎを感じてくれて、充実した気持ちやポジティブさが生まれたとしたら、それもプラスなのですよ。
稲・では今後もマルチスピーシーズやリジェネラティブといった考え方をベースにした活動を?
川・そうですね。去年から、牛糞を原料にした紙作りを実験しています。今は品質をどう上げようかという段階まで来ているんです。普通の紙のように加工したり絵を描いたりできるようになったら、アーティストさんとコラボレーションして、牛糞紙アートを制作し、畑の上でインスタレーションのように展示したい。もとが牛糞なので、自然に朽ちていけば畑の土に還ります。その畑から育った野菜を収穫する、というところまでやりたいんですよ。
稲・自然のサイクルをアートで見せるって壮大ですね。
川・そこまでやれば、けっこう伝えたいことが伝えられるのではないかと思うんです。あとは地域に対してもっと関わっていきたい。近隣の主婦の方々などが気軽に立ち寄ってくれるような、例えば習い事とか、地域の方を対象としたサービスを準備しているところで、年内には始められると思います。
稲・今日は勉強になりました。ありがとうございました。
以上は 1 年前に書かれた内容です
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