マンション火災での水損被害と補償の実態【2024年8月号】
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2024/8/1
今年4月、千葉市稲毛区柏台にある11階建ての稲毛ファミールハイツの7階で火災が発生。その際の消火活動による放水で火元の周辺18世帯が水損被害を受けた。室内の建材や家財が火災で燃えたり、消火活動により水浸しになった場合、それらを修繕するなど生活を再建する費用は補償されないケースが多いことをご存じだろうか。
千葉市消防局が発表している火災件数の速報値データによれば、令和5年中に発生した千葉市内での火災件数は262件。平均すると1か月あたり約22件の火災が市内で発生していることになる。火災は暖房器具を使用する冬に多いイメージがあるが、昨年8月の火災件数は27件、12月は26件。双方を比べてもほぼ変わらず、火災に対しては年間を通して注意する必要がある。
千葉市消防局が発表している火災件数の速報値データによれば、令和5年中に発生した千葉市内での火災件数は262件。平均すると1か月あたり約22件の火災が市内で発生していることになる。火災は暖房器具を使用する冬に多いイメージがあるが、昨年8月の火災件数は27件、12月は26件。双方を比べてもほぼ変わらず、火災に対しては年間を通して注意する必要がある。
マンション火災の特徴
現代のマンションの多くは鉄筋コンクリート造(RC造)や鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)になっているため、木造住宅のように火が燃え広がることは少ないという。
稲毛ファミールハイツの火災でも、火災による被害は、出火元と上階の部屋だけで、そのほかは消火活動の放水によって室内が水浸しになるという水損被害だった。
ただしマンション火災の消火活動において、消防隊は戸建て住宅の消火活動と同様に放水しているわけではない。千葉市消防局によると、戸建て住宅に使われる放水ホースの直径は65ミリに対して、マンションでは直径50ミリと小さく、さらに放水量を調整できるガンタイプノズルを使用し、水損被害を最小限におさえるため、より少ない水量で消火しているという。
稲毛ファミールハイツの火災でも、火災による被害は、出火元と上階の部屋だけで、そのほかは消火活動の放水によって室内が水浸しになるという水損被害だった。
ただしマンション火災の消火活動において、消防隊は戸建て住宅の消火活動と同様に放水しているわけではない。千葉市消防局によると、戸建て住宅に使われる放水ホースの直径は65ミリに対して、マンションでは直径50ミリと小さく、さらに放水量を調整できるガンタイプノズルを使用し、水損被害を最小限におさえるため、より少ない水量で消火しているという。
火元の家に損害賠償請求はできるか?
近隣火災のもらい火によって、自宅の家財や建材が燃えてしまった、消火活動によって水浸しになったなど、火災による被害を受けた場合、室内を修繕し生活を再建するには多額の費用を要する。では、その負担は誰がするのか?
出火元の家に賠償責任を求めたくても、失火責任法(正式名・明治三十二年法律第四十号/失火ノ責任ニ関スル法律)により出火者に重過失がない限り損害賠償請求はできないとされている。つまり、もらい火や消火活動によって被害を受けても、自身の火災保険で補償しなければならないケースが多いのだ。
出火元の家に賠償責任を求めたくても、失火責任法(正式名・明治三十二年法律第四十号/失火ノ責任ニ関スル法律)により出火者に重過失がない限り損害賠償請求はできないとされている。つまり、もらい火や消火活動によって被害を受けても、自身の火災保険で補償しなければならないケースが多いのだ。
失火責任法での「重過失」とは?
失火責任法で定められている「出火者重過失」とは、どのようなものだろうか? 過去の判例で重過失に認定された具体例として、「天ぷら鍋を火にかけたまま長時間その場を離れて引火した」、「タバコの火が完全に消えたのを確認せず放置したまま外出して出火した」などがあげられるが、これらはあくまでも過去の判例に基づく一例であり、類似した火災が全て重大な過失と認定されるわけではない。
もちろん消防隊側にも補償の責任はなく、損害賠償を請求することはできない。なぜなら消防法第29条第1項により「消火活動や人命救助等のために必要な場合にやむを得ない行為は適法」と解釈されているからだ。
もちろん消防隊側にも補償の責任はなく、損害賠償を請求することはできない。なぜなら消防法第29条第1項により「消火活動や人命救助等のために必要な場合にやむを得ない行為は適法」と解釈されているからだ。
火災保険の必要性
自宅の修繕費については、自身の火災保険で補償を受けるしかないといっても、そもそも火災保険に加入していないケースもあるだろう。また、火災保険に加入していたとしても、どれだけ補償されるのかは契約ごとに異なる。そう考えると、不測の事態に備えて火災保険の加入、見直しを検討することは重要だ。
なお、被災者の救済措置を設けている自治体もある。千葉市の場合、市内において被災した人のために、市営住宅で一時入居が可能な住戸を常に複数の団地に確保し、被害を受けた人には3か月無償で入居可能としている。ただ、現在は積極的に広報をしておらず、この救済措置を知らない市民は多い。
なお、被災者の救済措置を設けている自治体もある。千葉市の場合、市内において被災した人のために、市営住宅で一時入居が可能な住戸を常に複数の団地に確保し、被害を受けた人には3か月無償で入居可能としている。ただ、現在は積極的に広報をしておらず、この救済措置を知らない市民は多い。
出火原因は特定されていないが…
今回の火災の出火原因はまだ特定されていないが、近年増加している火災原因「トラッキング現象」の可能性も否定できない。 これはコンセントと電源プラグとの間に埃などがたまって発火する現象。古い建物では、長年コンセントに電源プラグを差し込んだまま、放置されていることもあり、本来なら定期的に電源プラグを抜いて掃除するべきだが、住民の高齢化が進んでいる地域では、細かいところまでの掃除はなかなか難しいという別の課題も見えてくる。
水損被害を減らすためにできること
火災予防や消火訓練など、大切な命や財産を火災から守るための事前活動は重要だ。その上で、万が一火災が発生した場合の消火活動による水損被害に備えて、私たちは何ができるだろうか。
例えば、防水性の高いブルーシートを常備しておくことだろう。ブルーシートといえば、台風による屋根や窓の破損補修に活用されていた光景が思い出される。台風被害があった地域では、ブルーシートを常備している家もあり、防災グッズの一つとして重宝されている。
火災時、即座に行動を起こすのは難しいかもしれないが、もし近くの部屋で火災が起こったら、大事な家財にブルーシートをかけたり、サッシや窓を全部閉めてから避難することで室内の水損リスクを減らせるという。とはいえ、まずは家財よりも命。人命を優先することを肝に銘じておきたい。
例えば、防水性の高いブルーシートを常備しておくことだろう。ブルーシートといえば、台風による屋根や窓の破損補修に活用されていた光景が思い出される。台風被害があった地域では、ブルーシートを常備している家もあり、防災グッズの一つとして重宝されている。
火災時、即座に行動を起こすのは難しいかもしれないが、もし近くの部屋で火災が起こったら、大事な家財にブルーシートをかけたり、サッシや窓を全部閉めてから避難することで室内の水損リスクを減らせるという。とはいえ、まずは家財よりも命。人命を優先することを肝に銘じておきたい。
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