千葉一族盛衰記 第十一話「千葉一族と将門記 其の三」【2024年4月号】

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  2024/4/2
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以下は 1 年前に書かれた内容です

本稿では、将門の後半の戦とその結末についてみていきましょう。

戦か安定か? 岐路にたった将門

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将門が復讐の鬼と化して暴れまわっていたころ、将門の宿敵にして叔父でもある良兼が逝去しました。死因は病によるものでした。

気が付けば、将門の強敵であった者たちは、少なくとも将門の目の前からいなくなりました。ここでもし将門が朝廷対策をしっかりとることに注力し、下総の経営に力を注いでいれば、彼の後半の人生は実り多いものになったかもしれません。しかし、すでに「戦が人生」となってしまっていた彼にとって、そのような道は思いつきもしなかったのかもしれません。

坂東の地で強い権力をもつにいたった将門は、武蔵の国の郡司と国司との間で発生した戦の仲介を試みます。この調停工作は、将門を仲介者とした当事者同士の酒宴による和解で、いったんは成功するかにみえました。しかし、戦争当事者の一方である源経基(みなもとのつねもと)が疑心暗鬼にかられ京都に逃げてしまったことで、状況は妙な方向にすすみます。

残念な経基は頼朝の先祖

源経基は、朝廷で将門が「謀反の疑いあり」と奏上しました。将門記に書かれている情報を元にすれば、
この源経基という人物は、実に残念な心根の持ち主に思えます。
この経基の奏上を受け、朝廷は将門に申し開きをするよう命令します。それを受けて将門が朝廷に提出した文書が認められ、将門は紛争を平和裏におさめた功労者として、かえってその功績を讃えられ、将門を訴えた経基は、讒言の罪によって拘禁されました。

余談ですが、この源経基という人物は、経基流清和源氏の始祖です。清和源氏といえば、鎌倉幕府をひらいた源頼朝を生んだ名族であり、源氏の流れの中で最も栄えた一族です。歴史というのは、ときに実に奇妙な流れになるものだと思い知らされます。

いずれにしても、ここで関東につかの間の平和がおとずれましたが、将門の行動が「将門記的正義」であった時代はここで終わりました。

将門の乱のはじまり

この事件からほどなくして、将門は、常陸の国主である藤原維幾(これちか)と戦火を交えることになりました。このとき将門が合力した人物である藤原玄明(はるあき)という人物は、将門記では「民の害毒」と評される悪人でした。

紛争の原因は、主に玄明による税金の不払い問題です。税金を払わなかった玄明は、乱暴を働き、官物を盗むなどやりたい放題で、その振る舞いが国主である維幾の逆鱗にふれたために、あわてた玄明が妻子をつれて将門の元に逃げ込んだのが発端でした。

この戦は将門が勝利します。このとき将門は、維幾の本拠地であった国府に侵入し、略奪と暴行を行ったと書かれています。さらに将門はこのとき、あろうことか「印綬」(いんじゅ)という朝廷が国司である維幾に与えた証明書をも略奪してしまうのです。

印綬を奪う行為は、当然に朝廷の権力に牙をむくふるまいです。この戦をもって、将門は後に引き返せない「反逆者の道」を歩むことになったのです。

この後将門は、興世王(おきよおう)という人物の勧めをうけて関東を支配する野望を抱くに至り、次の領土拡大を下野や上野にもとめました。

戦に勝利した将門は、上野の地で八幡大菩薩の使いを名乗る巫女の宣託を受けて、
あの有名な「新皇」を名乗るにいたるのです。

将門の最期

さて、新皇を名乗る将門が転戦する最中、将門の兵が貞盛の妻をとらえます。兵らは、貞盛の妻を凌辱し、事態はもはや泥沼の様相を呈していきます。そんな中、将門の長年の宿敵であり、妻を凌辱された平貞盛と、押領使である藤原秀郷が将門を追討するために兵をあげます。

この後の戦について、将門記の記述は非常に淡泊です。将門軍の劣勢と、戦による民の悲惨な状況を淡々と訴え続けます。そしてついに、天慶三年、天罰により神の矢が将門につきささり、将門は討ち死にしたのでした。

【著者プロフィール】
歴史噺家 けやき家こもん
昭和46年佐倉市生まれ。郷土史や伝説をわかりやすく、楽しく伝える目的で、落語調で歴史を語る「歴史噺家」として活動。著書に「佐倉市域の歴史と伝説」がある。
以上は 1 年前に書かれた内容です
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