[スポーツコラム]チームを強くするのは同じ目標を本気で信じること 【稲毛新聞2026年7月31日号】

  19   2026/7/29


作/千葉ドットCOO 梶原健

日本サッカーの基準が変わった

 FIFAワールドカップが終わった。日本代表は決勝ラウンドでブラジルに敗れ、大会を去った。私が今大会で最も印象に残ったのは、試合の結果だけではない。選手もサポーターも、敗戦を本気で悔しがっていたことである。これまでの日本サッカーにとって、決勝ラウンド進出は一つの大きな目標だった。そこにたどり着くまでには、長い時間と多くの人の努力があった。
 しかし、今回の日本代表が見ていた場所はその先。ブラジルを相手に善戦したことではなく、負けたことを悔しがっていた。サポーターからも「勝てたのではないか」という声が聞こえてきた。日本サッカーが長い時間をかけて積み重ねてきたものによって、目指す基準が変わったのだと思う。


「優勝」を本気で信じていた

 今大会では、監督も選手も、迷うことなく「優勝」を目標に掲げていた。ただ、優勝という言葉を口にするだけなら、それほど難しいことではない。大切なのは、その目標を本気で信じているかどうかである。
 今回の日本代表からは、決勝ラウンド進出や過去最高成績を目指しているような雰囲気は感じなかった。世界一になるために準備を重ね、本気で優勝を取りにいっていた。その本気は、言葉だけではなく、試合での姿勢や選手たちの表情からも伝わってきた。だからこそ、ブラジルに敗れたことが悔しかったのだろう。
 
 そして、その思いは監督や選手たちの中だけにとどまらず、サポーターはもちろん、普段はサッカーを見ない人たちにも伝わっていた。だから、多くの人が同じように悔しがった。監督や選手たちが本気で信じた目標が、いつの間にか日本中の共通言語になっていた。


本気は、組織の外にも伝わる

 私は仕事を通じて、さまざまなスポーツチームや組織に関わってきた。その中で感じるのは、強い組織には共通言語があるということである。
 
 ただし、立派な理念を掲げても、スローガンをつくっても、誰も本気で信じていなければ意味がない。監督も、選手も、スタッフも、同じ目標を信じているか。その目標を実現するために、自分が何をすべきかを理解できているか。結局はそこが組織の強さを決める。
 
 目標を本気で信じている組織には、共通の判断基準が生まれる。選手選考も、日々の練習も、試合での判断も、すべてが同じ方向へ進んでいく。そして、本気で信じている目標は、組織の中だけに収まらない。
 
 その姿勢が行動として表れれば、周囲にも伝わっていく。サポーターやスポンサー、地域の人たちも、その目標を自分たちのものとして受け止めるようになる。今大会の日本代表が、まさにそうだった。「優勝」は、監督や選手だけの目標ではなくなっていた。サポーターも、普段サッカーを見ない人たちも、日本代表なら本当に世界一を目指せるのではないかと信じ始めていた。

 日本代表は、まだ世界一になったわけではない。それでも、世界一を本気で目指し、その思いを日本中に伝えられるチームになったことは、大きな変化である。強いチームは、勝ったから強くなるのではない。同じ目標を本気で信じられた瞬間からチームは強くなり始める。
梶原 健プロフィール

1980年生 千葉県船橋市出身
2010年Bリーグ千葉ジェッツを創設、以降Jリーグアビスパ福岡社長代行、ラグビーNECグリーンロケッツ東葛代表など各種プロスポーツチームの経営に参画。25年千葉ドットCOO就任。一方で公益財団法人日本センチュリー交響楽団の代表理事を務めるなど文化芸術分野にも精通。
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