千葉一族盛衰記 第三十一話「千葉常胤の選択―頼朝挙兵前夜」【稲毛新聞2026年1月号】

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  2026/1/8
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 常胤は、石橋山の戦いに敗れた頼朝に房総の豪族としては最も早い時期に寄り添い、忠誠を誓ったとされています。後世から見れば、それは「先見の明ある選択」に映ります。 しかし、その判断がなされた瞬間、常胤の目の前にあったのは勝者の姿ではなく、都から遠く離れた伊豆で、二十年にわたり流人として生き延びてきた一人の青年にすぎませんでした。


常胤が見ていた景色

 常胤にとって、平清盛全盛期の房総は、決して居心地のよい場所ではありませんでした。源氏方の郎党と目されていた経緯、相馬御厨をめぐる佐竹氏との抗争。日常は、つねに「削り合い」の連続であり、風向きひとつで滅亡しかねない不安定さを抱えていました。1180年、以仁王による平氏追討の令旨が発せられると、情勢は一気に流動化します。後知恵で見れば、ここは「のるかそるかの大博打」に出る好機でした。しかし、それはあくまで結果を知る私たちの視点です。
 
 想像してみてください。道路も鉄道もなく、もちろん電話もインターネットもない時代に、常胤はいったい何をもとに判断を下したのでしょうか。都の政局、平家の衰え、伊豆に流された頼朝の動静。それらは、決して体系立って届く情報ではありません。
 
 1160年、平治の乱で敗れた頼朝が伊豆に流されます。その二年後、常胤は相馬御厨をめぐって佐竹氏との抗争に突入します。佐竹氏が平家方と結び、勢力を伸ばしていく中で、この対立が偶然であったとは考えにくいでしょう。
 
 つまり、1160年から1180年にかけての二十年間、常胤は「頼朝の未来」ではなく、「平家の現在」と「自らの足元」を見つめ続けていた可能性があります。
史料は沈黙しています。沈黙しているからこそ、当時の豪族がどのように情報を集め、何を頼りに決断したのかを考える余地があります。
 
 次回は、この時代の情報の流れに目を向けながら、常胤の判断の輪郭をもう少し具体的に描いてみたいと思います。
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